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2010年3月12日号

東アジア・ニュースレター

 ――欧米メディアからみた東アジアと日本――

筆者:前田高昭(米国バベル翻訳大学院国際金融翻訳講座担当)

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中国からは、欧米を中心に切り上げ圧力が高まっている人民元の問題について主要紙の論調を「シリーズその1」として取り上げた。切り上げが近いとする見方もあるが、当面はないとする論調が多い。
シリーズとして、引き続き取り上げていきたい。中国各地で不動産バブル発生が懸念されているが、香港では低金利を背景に一般市民が住宅不動産の購入に走っており、これがバブル発生に繋がると懸念されている。

台湾の第4四半期成長率が5年半ぶりの高水準となった。輸出と個人消費の好調が原因であるが、
背景に中国経済の回復が指摘されている。


        § § § § § § § § § § 

中 国

☆ 人民元の動向を追う(シリーズ・その1)
人民元切り上げを求める圧力が高まっているが、中国政府は断固として抵抗している。
理由として、14日付ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、日本の例を挙げている。
1985年のプラザ合意により円を1ドル=240円から2年間で160円に切り上げることが合意された。
だがその後、日本経済の成長は急減速し、日本政府は公共支出の増加と利下げに追い込まれた。
その結果、不動産バブルの発生と崩壊、その後に続く長い不況に見舞われた。
しかも、プラザ合意が目指した日本の巨額の貿易黒字の解消は、今日にいたるまで実現していない。
こうした日本の例から中国は大幅な為替相場の変更は経済に大きな打撃を与える一方で、貿易不均衡の解決に繋がらないと学習したと述べる。中国のエコノミストの多くは、解決策は国内貯蓄率の引き下げにあると見ている。切り上げは中国の輸出産業に対し即座に大打撃を与えるが、切り上げの効果とされる世界的不均衡の解消は、曖昧模糊としていると指摘する。

同じく16日付WSJは、そうした中国の主張を切り崩す要因としてインフレを挙げる。中国指導部は社会不安を煽るインフレを恐れており、これが大きな要因になると見ている。インフレ率は景気回復を反映して1月には前年同月比で1.5%上昇し、今後加速していくと見られている。対策として人民銀行は預金準備率を今年に入り2ヶ月連続し引き上げている。切り上げにより輸出を抑制し経済の過熱を抑え、輸入物価を引き下げられる。07年に政府は人民元を対ドルで15%切り上げてインフレ懸念を乗り切った実績もある。ガイトナー米財務長官は、今年中にも切り上げがあると語り、市場も今後12ヶ月以内に人民元が2.7%切り上がると織り込み始めたとWSJは伝える。ただし、最もありうるシナリオは、現在のドル固定相場の状態を脱して通貨バスケット制に戻り、かつ日々の変動幅を拡大するという05年の人民元改革の再現であるとしている。

こうした見方に対し16日付ビジネス・ウイークは、近い将来の人民元を切り上げはないとする分析記事を発表した。理由は政治的な要因である。米政府は以前から人民元の切り上げを求めているが、最近でもオバマ大統領が、中国の通貨政策は世界的不均衡是正の障害になっていると非難し、経済の過熱が懸念されている中国には人民元切り上げが利益になると主張している。だが、米政府による台湾向けの武器売却案件やダライ・ラマ14世とオバマ大統領の会談、中国政府のインターネット検閲に対する米政府の非難などにより米中関係の緊張が高まっており、中国指導部が切り上げ要請に耳を傾ける状況には到底なっていないと指摘する。

以上のように、人民元動向についてはさまざまな見方があり、当面その状況から目が離せない。
この問題をシリーズとしてしばらく取り上げて行くことにしたい。

☆ バブル発生が懸念される香港不動産市場
中国本土で不動産バブルの発生が懸念されている中、香港でも政府が実施した土地入札が異常な活況を呈したことから、不動産市場の過熱が指摘されている。香港の大手不動産開発業者、サンフンカイ・プロパティ(新鴻基地産発展有限公司、Sun Hung Kai Properties Ltd.)は22日、激烈な競争を経て郊外にある1万3,000平米の土地を33.7億HKドル(4億3,400万米ドル)で落札した。この価格は事前の価格予想3億6,200万米ドルと最低入札価格の2億5,800米万ドルを大幅に上回った、と2月23日付WSJは伝える。

さらに、この取引に先立ちサンフンカイは、新複合住宅地域にある900戸の大型マンションをスクエア当たり700米ドル、総額にして5億4,100万米ドルで売却している。WSJは、この価格には大幅なプレミアムが付され、大型住宅案件が投機の対象になりやすいことを示したと報じ、香港地域全般にわたり信用の膨張と流動性の増大により不動産価格が異常な水準に高騰するのではないかとの不安感が台頭している、と述べている。なお、サンフンカイは、時価総額が340億米ドルに達する香港最大の不動産開発会社である。

他方、政府資料によれば、中国本土でも住宅地の価格が昨年は25%程度上昇し、人民銀行が預金準備率を2ヶ月連続で引き上げるなど素早く対応している。これに対し米ドルとペッグするカレンシー・ボード制を採用する香港では、金融政策は米国に追随せざるを得ない状態にあるため裁量の余地が少ない。
市場関係者は、香港では低金利が長く続く環境の中で、不動産購入者が不動産価格は永続的に上昇すると思い込み、不相応な不動産購入に走っている、と市場関係者は指摘している。

ただし、当局も腕を拱いているわけではない。ツアン財務官は、政府としても不動産市場を常時監視し、不動産の売り出し方針を微調整すると言明している、とWSJは報じている。香港金融管理局(HKMA)も昨年末に高級住宅不動産の購入時に支払う頭金を30%から40%に引き上げる措置を発表している。
その一方で、香港での不動産バブル発生の懸念はないとする見方もある。理由として投機筋の動きが少なく、住宅借入金の支払い比率が過去20年の平均52.6%より低い36.4%にあることが挙げられている。

以上の通り、香港では今のところ投機筋が活発に動いている気配はないようである。
ただし、低金利(借入金利は0.7%程度)を背景にして一般市民が不動産購入に走り、これが価格上昇を煽り
バブル発生につながる恐れがあり、当局の対応に注目していきたい。

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台 湾

☆ 中国に牽引される経済
政府発表によれば、昨年第4四半期の経済は、好調な輸出と個人消費を背景に前期比で年率18.02%、前年同期比で9.22%の成長を記録した。前期比伸び率は5年半ぶりの高い成長率で、メディアの事前予想8.95%の2倍に達したと22日付WSJは伝えている。さらに同日付フィナンシャル・タイムズ(FT)は、高水準の成長率は中国経済の回復(第4四半期の成長率は年率10.7%)によるところが大きく、台湾のほかにタイ、マレーシアなども同様の恩恵を受けたと報じている。

ただし台湾の場合、中国向けの輸出が第4四半期に年率で45%の伸びを示しており、好調が伝えられる他のアジア諸国の水準を上回る成長率を達成して、金融危機以前の水準に戻った。
09年通年では、第2四半期が好調であったにもかかわらず、1.8%のマイナス成長となったが、今年の成長率については、政府は4.7%のプラス成長を見込んでいる。因みに、アジア諸国のうち、輸出、観光、農業が好調であったタイは第4四半期の成長率が前期比5.8%増と10年ぶりの高い伸び率を示したとFTは伝え、アジア地域については、雇用と民間部門の投資の増加が続けば、成長はさらに加速するとエコノミストは見ていると報じている。

台湾についても、製造業の設備稼働率がすでにかなり高く、中国からの需要が増加すれば、増設の必要が起きて雇用と原材料の買い付けを増やすことに繋がるとエコノミストは述べている。
中国経済は目下、アジアのみならず世界経済を牽引しているが、台湾を含め近隣のアジア諸国が受ける恩恵はさらに大きくなりそうだ。

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