翻訳出版オンラインワークショップ 「星の王子さま」
監訳者 片木智年先生からのメッセージ
星の王子さま (サン=テグジュペリ著)

 一度きりの人生で出会えたことを、感謝したくなる本。時にそんな幸運な出会いに恵まれることがありますが、多くの人々にとって、『星の王子さま』は、まさしくそんな一冊のようです。世界百数十カ国語に訳され、日本でも愛され続けてきたフランス文学の珠玉。タイトルからして、子供だけに向けられた本と誤解されがちですが、ナチスに屈した故郷フランスを離れ、アメリカに亡命した作者サン=テグジュペリが、祖国開放戦線への復帰を前に思いの丈を綴っていった遺品です。1年後、コルシカ島の基地を飛び立った飛行士サン=テグジュペリは、快晴の地中海に消えました。美しい夏の朝でした。


 本作では、作者自身の少年時代の幻を思わせる「王子さま」と、語り手の間の対話が、清澄な砂漠を舞台に、繰り広げられます。やがて「王子さま」は自分の星に戻っていくために、毒蛇にくるぶしをかませて、砂の上に倒れるのですが、翌朝、死体は見つかりません。不思議なお話です。しかし全編を通じて、生と死をめぐる瞑想、死を超えて生きようとすること、死を超えて愛し続けようとすること、そんな希求が表現され、子供・大人を問わず、私たちの心に消し去り難い印象を残しているのです。


 このLe Petit Princeの原文は、厳選された語彙と、研ぎ澄まされたシンプルな構文で書かれた、平易、かつニュアンスに充ちたフランス語です。それゆえ、しっかりと原文を理解するだけでなく、表現手段としての日本語の可能性を探りながらの翻訳作業が大切になります。
 人類文学史上に輝き続けるであろうこの稀代の名編を、新たな日本語で生まれ変わらせる。そんな作業に一緒に参加してみませんか?



監訳:片木智年(慶應義塾大学文学部教授)


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