【特別特集】新型コロナに教えられたこと – 政府の行動力が如何に重要か

オーストラリアにおけるコロナからの教訓

~政府の行動力が如何に重要であるか~

ウォーカー 美穂子(バベル翻訳専門職大学院生)

 皆様、新型コロナウィルス・パンデミックのなか、如何お過ごしでしょうか。初めまして。バベル大学院法務翻訳専攻のウォーカー美穂子と申します。私は、アメリカ生まれ、日本、アメリカとイギリス育ちの日本人で、主人はイギリス人です。2011年に東京から西豪州のパース(Perth, Western Australia)に越しまして、長女のソフィーと去年生まれた次女の英美を含む家族4人で緑と自然に囲まれた郊外に住んでいます。

 私は、今まで政治への関心はあまり強いものでは、ありませんでした。(2016年にトランプがアメリカの大統領選挙に勝利した時には大悲劇とは思いましたが)今回の新型コロナウィルスに対する各国政府の反応、政策とその影響について常時ニュースで見ることにより、国を代表する政府が如何に重要であるかを強く感じました。

 新型コロナウィルスに対する豪州政府の反応は、とても迅速でした。首相スコット・モリソンは、1月頃から常に記者会見で国民に対し、新型コロナウィルスについて内容の込み入った警告を発し、3月22日には緊急事態宣言を出しました。その内容は、スーパーやドラッグストアなど日常生活に必要なビジネスを除くレストラン、バー、パブ、映画館を含むすべての店舗やエンターティメント施設の閉店と、国民すべてに対する自粛要請でした。これを無視して営業を継続した場合は、その状況に応じて多額の罰金が発生する、と発表されました。又、ハイリスクにある高齢者を守るため、午前7時から8時は60歳以上の高齢者限定でスーパーが開き、食品宅配サービスも高齢者又は持病のある人のみ利用対象となりました。この緊急事態宣言がされた3月22日時点で、豪州全国の感染者数は1,717人で、死亡者数はたったの7人でした。同日の日本における感染者数は1,101人で死亡者数が41人。死亡者数が少ないために国民から非難を浴びる可能性もありながら、モリソン首相は、緊急事態宣言を出したのです。

 オーストラリアへの出入国については、あいにく3月20日にシドニーに着岸したクルーズ船を巡る対応で大きなミスはありました。一部の乗客がウィルス検査で陽性となったにも関わらず、2700人を既に下船させてしまい、東海岸の感染者数が1週間で162人にのぼる結果を招きました。しかし、そういうミスを繰り返さないための対策がすぐに行われ、西豪州に到着したフェリーの乗客全員を近くのロットネスト島で2週間強制隔離し、外国人については、パース空港から即帰国させるなどの対策をとりました。更に豪州政府は、3月28日から国への出入国を原則禁止し、豪州に帰国した人を専用バスで政府指定のホテルに連れて行き、14日間の強制隔離を行いました。また、同日には中小企業や自営業を含め、新型コロナウィルスに影響されている人の負担を軽減するためのビジネス計画が発表され、翌日から実行されたようです。何事もよく徹底され、あらゆる政策の全てが事前に記者会見で効率よく説明されていました。そして最後には西豪州首相のマーク・マガウワンが西豪州の州境を4月2日に閉鎖し、私が住むパースは完全なロックダウンに入りました。ロックダウン中、スーパーや日用品を扱う店舗は、政府の指針を順守しながらビジネス形態を上手く変更した上で、営業を続けました。例えば、近所の八百屋は、店内が狭すぎて客同士が1.5メートル離れることが無理であるため、裏口を利用したドライブスルーで食品をピックアップする形態の店舗に変更し、近所のマクドナルドはドライブスルーでミルクと食パンも売り始めるなど、あらゆるお店があの手この手で客のニーズに対応しながら、ビジネスを継続する方法を考えました。

 ロックダウンが始まって3週間後、新型コロナウィルスの件数の増加が収まり、ロックダウンを解除するための3段回の計画が、豪州首相の記者会見で発表されました。まずは、4月27日から10人までの集まりが許可され、カフェの持帰りが可能となり、学校も再開されました。次に、5月18日から会社に数人ずつ出勤可能となり、20人までの集まりが許可され、公園やスポーツジムなども時間帯と人数を制限して利用できるようになりました。6月8日から第3段回に入る予定となっています。100人を超えた集まりと豪州からの出入国のみ禁止されるのを除き、生活が元に戻ります。今後、どうなるでしょうか。第2波が起きるかもしれませんし、新型コロナウィルスによる豪州と世界経済への影響も今後明らかになるでしょう。しかし豪州政府は、今回の新型コロナウィルスについて、できる限りの政策を行ったと思われます。

 今回の新型コロナウィルスを通し、国を代表する人物により国民にもたらす影響が如何に異なるものかを学びました。豪州の徹底した政策とその成果、そしてその逆の例として米国の大統領がアメリカの国民に対して与え続けている苦しみと怒り。これを機に、政治に関心を持ち、豪州、米国、日本を含む他の国の政府と国際関係について、今後も考えていくつもりです。