世界の出版事情
各国のバベル出版リサーチャーより 第24回
クリーバー海老原章子(翻訳者、バベル翻訳専門職大学院修了)
新型コロナ・パンデミックの中、皆様いかがお過ごしでしょうか?
わたしが住むBC(ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー島は、新たな感染者ゼロの状態がしばらく続き、現在は第3フェーズに入りました。
一度に入店できる人数が制限されるなど、まだまだ規制はあるものの、レストランやバーが再稼働しだしました。
学校も週1でオープンしましたが、あくまでも各自の判断に基づくオプションです。不安ならば通学する必要はなく、そのままオンラインで授業を受けることができます。
前置きが長くなりましたが、しばらく自主隔離が続き、普段はあまりテレビを見ることがないわたしですが、ついにNetflixのお世話になることに。その中でも3シーズンを一気に見てしまったのが『Anne with an "E"』という番組です。
日本では『アンという名の少女』で配信されていますが、ご覧になったことはありますか?
『Anne of Green Gables』に基づきドラマ化されたこのシリーズは、カナダ人俳優を多く起用し、原作の舞台となるプリンスエドワード島だけでなく、オンタリオ州トロントでドラマの撮影が行われました。
カナダ色の強いシリーズです。
原作と違う!という赤毛のアンのファンもいるようですが、赤毛で顔はそばかすばかり、痩せっぽちのアン、ドラマでアンを演じている女優さんはそのイメージそのものでした。
当初は7シリーズが予定されていたのですが、突然シーズン3での終了が発表され、ファンの間ではシーズン4の続投を求め署名活動が起こっているほどです。
『赤毛のアン』というタイトルはどなたでも聞いたことがあると思いますが、実は読んだことがないという方も多いのではないでしょうか?
原作の『Anne of Green Gables』は、驚くほど多くの出版社から出版されています。
続編を集めたコレクションになっているものもあります。今回は、可愛らしいイラストが魅力的なこの一冊をご紹介します。
アンは孤児という設定ですので、怒り、悲しみを感じる内容も含まれます。それにもかかわらず、優しい気持ちになるのは、アンだけではなく、アンを取り囲む人たちから感じる愛情が巧みに描写されているからでしょう。
登場人物は、それぞれ実にユニークです。

作: L.M. Montgomery
表紙絵:Anna Bond ‐ Rifle Paper Co.
邦題(仮)『赤毛のアン』
作品について
舞台は、プリンス・エドワード島の村、アボンリー。
カスバート家のマリラとマシューの兄妹は、孤児院から男の子を養子に迎えるはずだったが、その約束の日、駅に降りたのは、アン・シャーリーという11歳の赤毛の女の子だった。
マリラはアンを送り返そうとするが、明るくおしゃべりなアンに心を動かされ彼女を引き取ることに決める。
引き取られてからクィーン学院を卒業するまでのアンの少女時代5年間を描いた作品。
作家について
カナダ東部プリンス・エドワード島のクリフトン出身のルーシー・モード・モンゴメリは、生後1歳9か月のとき、母親を結核で亡くしている。
その後、農家に暮らす母方の祖父母に厳しく育てられた経験を持つ。父親の再婚後は、継母に子守りや家事手伝いを命じられ、勉強をしたいという夢を打ち砕かれるものの、この時期に書いた詩やエッセイが新聞に掲載され、作家を目指すきっかけとなったと言われている。
【プロフィール】
クリーバー海老原 章子
バベル翻訳大学院法律翻訳修了。結婚後は夫の仕事の関係でマレーシア、トロント、アラブ首長国連邦に居住。現在は、カナダBC州のナナイモに一家5人暮らし。これまでに担当した書籍翻訳は3冊。フリーランスとして翻訳のお仕事をしています。