翻訳と通訳の距離は縮まりつつある!?

通訳力で翻訳力を、翻訳力で通訳力を強化する

リモート通訳が当たり前の時代に

通訳教育のオンライン化は可能

翻訳業が通訳業を、通訳業が翻訳業を付帯サービスに

バベル翻訳専門職大学院(USA) 副学長 堀田都茂樹

   2020年8月7日   

本誌、9月号より、「翻訳と通訳の距離」について、当翻訳専門職大学院生、修了生にも多く見かける通訳、

翻訳の兼業の視点から、「翻訳と通訳の距離が縮まりつつある!?」と言うテーマで、自由な意見交換をしたいと考えています。

もともと、英語圏ではtranslation、translatorと言った場合、この辺を区別していないことが多いことはすでに読者の方々もご存じかと思います。最もこれはある意味 でまだ未進化の状態と私は考えていますが。

このテーマに関しては、広く、様々な視点からのご意見を寄せていただきたく!!

また、今回は私が指名した方々からも問題提起をしていただこうと考えています。

最終的に、その辺の交通整理は私の方でさせていただきます。様々なご意見、ビジネス提案、問題提起をよろしくお願いします!!

では、今回は手始めに、翻訳と通訳の共通点と相違点を整理してみましょう。

共通点

  • ソース言語をターゲット言語に変換する
  • ソース言語の内容とターゲット言語の内容が同じになるように変換する
  • 言語的差異のみならず、文化的差異の処理が必要となる

相違点

  • SpokenとWritten、モードが違う
  • 作業に許される時間に違いがあり、翻訳は表現形式にまでこだわり、通訳は内容を重視する
  • 翻訳は等価性 (Equivalence) 重視、通訳は忠実性 (Identity) 重視の傾向がある
  • 翻訳には調査の時間が持て、改定、変更が可能
  • 翻訳は永続的、通訳は一時的

もっとも、いわゆるメディア翻訳と言われる、字幕翻訳、動画翻訳、放送通訳はこの2つの領域にまたがる作業とも言えます。

それでは、ここでは皮切りに、翻訳になぜ通訳力が役立つかを考えてみたいと思います。

翻訳家、東大教授の柴田元幸さんが、翻訳の際には「原作の‘声’を聴け」と主張、原文の思考の流れを乱さない、頭から訳すこと(昇順訳)を提唱しています。
 
これこそ、同時通訳の奥義であり、通訳訓練の基本であるサイトトランスレーションの技法でもあります。
 
もっともこの技能はバベルでは約40年前より「翻訳文法」(英語・仏語・独語)として、頭から訳すとしてルール化し、翻訳教育のカリキュラムとして確立しています。
 
また、バベルの修了生でもあるミステリー翻訳家の山本やよいさんは毎朝川端康成を只管音読、筆写していると聞きますし、多くの翻訳者が愛読書を音読していると聞きます。

また、最近の翻訳者は完成した訳文を音読しながら推敲するとも言います。

すなわち、リズム感のある翻訳文をスピーディに生むためには、通訳的技法、通訳的訓練技法は有効であると言えそうです。

ここで、代表的通訳訓練技法の翻訳への効用も考えてみましょう。

サイトトランスレーション

原文にセンス(Sense)グループごとにスラッシュを入れて、原文の思考の流れを乱さないように、文章を読みながら頭から声に出して翻訳していく訓練です。

リズム感のある、原作の思考の流れに沿った訳文をスピーディに生み出す有効な方法となります。

シャドウイング

シャドウイングとは、音読された英語を時差をつけて音読で追っかけていくことですが、これは英語のイントネーションと表現リズムを体得するには有効な方法です。

ここでは、少なくとも訳文の推敲の過程で原文と翻訳文の音読を繰り返し、比較、対照することをおすすめしたいと思います。

サマライズ 

スキミング(大意把握)して要約、スキャニング(ある特定な情報を検索)等、言語の構造性、パラグラフ構成、キーワードを意識して素早く内容をつかむ方法は通訳のみならず翻訳者にも必要な技術です。

また、こうした訓練は言うまでもなく、通訳に生かせるのみならず、翻訳者にも要求されるオーラルコミュニケーションのスキルを強化に役立つでしょう。

近い将来、BABEL UNIVERSITYでも2つ相互乗り入れして、シナジー効果をもたらす翻訳教育サービスも提供したいと考えています。 

では、9月からの特集連載「翻訳と通訳の距離」に関して、自由な視点の投稿をお待ちします。日常的視点での翻訳と通訳を論ずると言った内容でも大歓迎です。

そもそも翻訳とは、そもそも通訳とは、原点に返って一緒に考えましょう。