【特別特集】新型コロナに教えられたこと – オーストラリアにおけるコロナからの教訓

~ “Do the right thing!”:私達一人一人の自覚と忍耐と良識ある行動の大切さ ~

フィニモア 佳子(バベル翻訳専門職大学院生)

皆さま初めまして。 早いもので2003年に家族でブリスベンからロシアへ移り、ヨーロッパを転々とした後、シンガポールに住み始めてから今年で8年目となります。息子達がブリスベンの高校と大学に通うため、かねてより同市にはよく訪れていました。しかし今は、新型コロナの影響でブリスベンに予定外の長期滞在中となっています。

オーストラリアでは、新型コロナウィルスの感染者が最初に認められてから約半年が経っています。集団発生の第1波を既に経験し、その状況は6月8日号でウォーカー美穂子さんが、幅広い内容を的確に報告されています。そこで述べられていた「政府の行動力の重要さ」に私も共感します。記事の最後の「今後、どうなるか」の問いを(勝手に)引き継がせていただき、最近までの動向を追加で報告できればと思います。

今年1月25日に国内初のコロナ陽性反応が確認されたことを皮切りに、豪州は「最初期(~2月末)」「第1波(3月)」「減少期(4月)」「安定期(5~6月)」を経験し、現在は「第2波(6月末~)」という状況におかれています。以下のグラフでもその経過を確認できます。

*横軸は日付(dd-㎜)、縦軸は報告件数を示します。
(縦軸の‘400’の数値が上手く表示できず、お詫び申し上げます。)
出典:  オーストラリア政府、保健省

世界保健機構(WHO)による「パンデミック宣言」以降、豪州は各種規制措置の影響で経済は後退しています。国際情勢悪化のあおりも受け、不安要素が溢れています。また、過大なストレスや不安に苦しむ人々も増え、社会問題となりつつあります。ワクチンが開発段階の今、政府はこの脅威的伝染病から国民の健康と生活を守るために試行錯誤を重ねながら「パンデミック前の生活を取戻すまでの道のりは長い」とし、国民に引続き “Do the right thing!” と呼びかけています。これは政府が医療専門家と合同で打ち出した個人が行うべき感染防止策のことを指し、具体的には「他人との距離(1.5m)」「適切な衛生習慣」「不調時の自宅待機」「必要時の自己隔離」「COVIDSafeアプリの使用」などを含みます。「郷に入っては郷に従え」で、今私がここで出来る事は、豪州政府の勧告を尊重し従うことだと思います。

第1波の最中、3月18日にスコット・モリソン首相は「バイオセキュリティ上の非常事態」を宣言し、翌19日の国境閉鎖後、国内の各州各地域も次々にロックダウンとなりました。“New Normal”と盛んに言われた通り、地元の多くの商店などから人の姿が消え、スーパーなどの店内で列に並ぶところには1.5mを示す印とレジには透明スクリーンが設置されました。

政府はコロナの影響を受けている個人・事業者・個人事業主に「経済支援(収入補填・世帯支援・年金の早期引出・キャッシュフロー支援・雇用維持給付等)」「ナショナル・デット・ヘルプライン」「翻訳通訳サービス」「メンタルヘルス支援」等の実施を始め、地元の政府窓口では連日大勢の人が支援を受ける手続きをしていました。

全国的に生活必需品のパニック買いが起きたことにより「高齢者優先の入店時間」や「お1人様1~2点限り」を実施する店が増えていました。連日の商品の回転の速さに商品陳列作業が追い付かない店は、追加の雇用をしていました。我が家ではスポーツジムに通えなくなった長男が突如、ベンチプレスの在庫がまだ残っている店を必死で検索していました。息子達の1学期の試験は、大学はオンラインで、高校では(試験期間中の生徒数が少ないため)机の配置を工夫しての実施でした。

このわずか数週間後には、新規報告件数「0」を記録する州や地域も出始めました。これは政府の迅速な対応と国民の協力の賜で、更にオーストラリアの地形(島)が功を奏したと言われています。高校の2学期開始時(4月中旬)は全学年でオンラインの授業でした。制限緩和に伴い5月中旬から学年限定(小1・2と高2・3)で校舎での授業を再開し、5月末には全学年が校舎での授業に戻りました。冬休み(6月下旬~3週間)には制限が緩和された地域に出かける人も増え、誰もがこのまま順調な回復を願いました。

しかし残念ながら、6月末頃よりビクトリア州で第2波が確認されてからは急速に感染拡大しています。第2波の主な感染原因として、海外帰国者が政府指定のホテルで強制隔離する際のホテルで厳守するべき隔離方法が徹底していなかった事が疑われています。また、行政管理下の大規模な高層集合住宅で多数の感染が確認され、そこでの住環境(共用部分が多く大勢が密集して暮らす)と、住民の多くの職業が「日常に必須な業務」であるため自宅待機や自己隔離が難しい事が懸念され、各棟のロックダウン体制が取られました。 さらに、同州内で同時期に感染した別個人(自覚症状無し)が、ニューサウスウェールズ州を訪問したため、ここでも制限緩和が始まったホテル・レストラン・パブなどを中心に感染拡大中です。

政府が勧告する感染防止策は第1波で有効性が実証済みである点から、”Do the right thing!” を厳守していれば第2波は防げたかもしれません。有効なワクチン不在の今、新型コロナから安全な新しい生活環境を整え維持する事は、今の私達の共通の課題であり、それを達成するためには一人一人の自覚と忍耐と良識ある行動が大切かと思います。