「通勤電車は、貴重な勉強部屋です」 高坂素行さん

高坂素行さん

バベル翻訳大学院(USA)に入学して早3年が経ち、先日ようやく2年次に進級することができました。「予定通り!」と大見得を切りたいところですが、正直「ちょっとかかり過ぎたなあ」というのが実感です。 現在、通訳・翻訳エージェントに勤務し、コーディネータとして主に翻訳者手配、チェッカー業務を行っています。帰宅時間が遅くなることも結構あり、平日の帰宅後に机に向かうことはほとんどできません。課題やレポートは、もっぱら往復の通勤時間と週末を活用して集中的に作成してきました。自宅にいると取りだめしたビデオや読みたい本の誘惑につい負けてしまいますので、通勤時間帯の方がかえって学習効率が良かったりします。私にとって通勤電車の中は、限られた時間とスペースを提供してくれる貴重な勉強部屋なのです。

決して器用な方ではないので、要領よくどんどん先に進むということはできません。ただ、訳文を考えて頭をひねっていると、時が経つのを忘れてしまいます。それが少しも苦痛でなく、食事を抜いても全然平気なくらいですから、もしかしたら翻訳作業中はエンドルフィンが大量に分泌されているのかもしれません。 一年次の講座で特に印象に残っているのが「翻訳英文法」講座です。講義を受講の後、各回の学習テーマに準じて独自に原文と訳文採集を行い、試訳を作成して感想を述べるというのが課題でした。毎回3つの適当な原文を採取するのは大変な作業でしたが、その分多くの原文に触れる機会が得られて読解力が増し、また既にプロの方々が訳されている訳文を分析的にとらえる習慣をつけることができました。

大学院の良さは、やはり一流の講師陣の授業を、バランスよく整えられたカリキュラムで受講することができる点にあると思います。通信添削講座、通学単科コースの受講歴はかなりありましたが、大学院の講義を受講してみて、あらためて自分の苦手分野、知識不足に気づかされました。木を見て森を見ず、であった自分を反省する貴重な機会をいただいております。

課題の提出が多少滞っても、「もういいや」とか「やめてしまおう」と思うことは一度もありませんでした。それは何より「翻訳が好き」であったから、そして「将来の目標」があったからだと思います。 私は文芸・映像翻訳専攻で、将来「自分の訳書を出版したい」、「プロの翻訳家になりたい」という目標を抱いてきました。地道に努力してきた成果が、Co-Pub共訳出版のコンテスト入賞などとして少しずつ表れてきており、うれしく思っております。しかし、まずは大学院を卒業しなければ・・・・・・。

今後さらに学習のハードルは高くなっていくことでしょう。また、自ら高いハードルを課していかなければ、進歩はありません。時にハードルを倒したり、転んだりしながら、それでも一歩、一歩前進していきたいと思います。それが自分のスタイルなのですから・・・・・・。

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